環境アセスメント分野の研究・論文

環境影響評価の計画段階環境配慮において必要とされる “生物多様性ポテンシャルマップ”の開発

概要

一般社団法人日本環境アセスメント協会の自然環境影響評価技法研究会では、事業の計画段階における「生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全」をはじめとする生物多様性保全上の配慮に有用な、環境要素や重要種等のポテンシャルマップ等から構成されるデータベース、「生物多様性ポテンシャルマップ」(Biological Diversity Potential Map)(以下、BDPマップ)の開発を目指し、平成21年度から検討を行ってきた。
本報告は、BDPマップの構成や整備方法、想定される利用形態、仮想アセスを通した適用効果等を示す。

湿地に生育する絶滅危惧植物の特性と保全方法検討のための実験 (ヒメハッカを例として)

概要

絶滅のおそれのある動物や植物を保全するためには、生態学的な知見をふまえた手法検討が必要である。だが、多くの種で生態学的な知見は十分に明らかになっておらず、環境アセスメントにおける保全措置の検討時に困難を生じることがある。
今回、環境省レッドデータブックの絶滅危惧Ⅱ類であるヒメハッカ(Mentha japonica)について、12年にわたって自生地を観察し、それをもとに保全方法の検討のための実験を行った。その調査の結果得られた知見を報告するとともに、ため池や里山樹林などのかつて人為的管理下にあった環境を保全するにあたっての留意点について考察を加えた。

国内動植物種におけるHSIモデル検討の試み

概要

わが国では、平成11年6月に施行された環境影響評価法に基づく基本的事項(平成9年環境庁告示第87号)に「予測評価においては、可能な限り定量的手法を用いる」旨が記載された。これにより、従来は定性的な予測評価に基づき環境保全措置が検討されることの多かった自然環境分野についても、定量的な予測評価手法の導入、より具体的かつ効果がみえやすい環境保全措置の検討が期待されている。
HSIモデル(Habitat Suitability Index Model、ハビタット適性指数モデル)は米国のNEPA(National Environmental Policy Act)に最もよく利用されるHEP(Habitat Evaluation Procedures)で用いる定量的な予測評価ツールである。
当社は、(社)日本環境アセスメント協会・研究部会 自然環境影響評価技法研究会に参加し、その一環として、国内動植物のHSIモデル案の構築に取り組んだ。本報告では、特にモデル作成の手順等に焦点をあて、国内の環境影響評価で使うためのモデルづくりについて検討を行っている。本研究の成果は、環境影響評価の現場に定量的手法を導入するための一助となることを期待している。